天理大学

天理大学同窓会ふるさと会

ホーム ホーム > 縁はつづく浜木綿の白い花

縁はつづく浜木綿の白い花


新型コロナウィルスが変異株を増幅し、いまだに不安な日常生活が続いています。くわえてロシアのウクライナ侵攻もあって、私たちは極度の緊張を強いられています。そうしたなかで、最近のことですが、縁や絆のめぐりあわせに心うたれることがありました。卒業生の皆さんは、ふるさと会館の西隅の植栽のなかに、浜木綿が植えられていることをご存知でしょうか。この浜木綿は、もともと本学の国文学国語学科の蜂矢宣朗教授が、旧文学部の研究室のあった木造モルタル造りの2階建て校舎の軒先に植えられたものでした。ところが1992(平成4)年に校舎が解体されるにともなって、この浜木綿も消滅する危機に見舞われました。そのとき、教え子のU君が引き取って世話をしてくれました。温暖な海岸の砂地に生育する浜木綿の花は、この天理では実を結ぶことは容易ではなく、10年の歳月をかけてようやく種子をつけることができました。そして2004(平成16)年にふるさと会館の竣工にあわせて、現在の場所に里帰りができました。

その浜木綿は台湾の東呉大学にもあります。天理大学を定年退職された蜂矢先生は、東呉大学専任教授として赴任、日本文化研究所に博士課程が設置された記念に、宿舎の庭に浜木綿を移植されました。そしてその日本文化研究所を退職されて日本に帰国されるとき、退職金をすべて研究所に寄付されました。それを基金にした「浜木綿」奨学金によって、優秀な日本文学・日本語学の研究者が育成されました。この6月に修了するIさんは、台湾大学修士課程のときの私の教え子ですが、「浜木綿」奨学金を給付され、みごとに文学博士の学位を取得しました。Iさんからの報告では、昨年3月に発行された「東呉日語教育学報」は蜂矢先生生誕100年の記念号であったとのこと。天理で種蒔きされた浜木綿の花にこめられた蜂矢先生の思いは、40数年後のいまもなお台湾で多くの研究者や学生たちの学びに受けつがれています。

2022(令和4)年5月

天理大学ふるさと会
会長 太田 登

ページの先頭へ